NHKのプロフェッショナルという番組に、左官の挟土秀平さんが取り上げられていました。
左官の材料にはいろんなものがありますが、挟土さんは本物の「土」を使う、専門家です。
いまや、日本各地だけでなく海外にも呼ばれるほどの人気でありながら、挟土さんの仕事に対する態度はいつでも「臆病」で、常に「大丈夫だろうか」と自問しておられるそう。周囲の職人さんたちにも「もっと臆病に」と声をかけておられました。
土を扱う仕事は、湿度や温度に左右され、どんなに場数を踏んでいても一度として同じ条件での仕事はないのでしょう。
「怖くて、逃げたくなることもしょっちゅう。」なのだそう。でも、
「怖い、怖い、と思っているときは、頭の中がものすごく回転してる状態」「いつも怖いと思って不安であるからこそ、周りの空気が読める。」と、言われていたことがすごく印象的でした。
子供のころから内気で人見知りだったという挟土さんですが、司会の方の質問にはよどみなく答えておられました。 そしてそこには、常日頃、信念をもって仕事をやり続けている方ならではの、説得力がありました。
満足してしまわずに、常に新しいことに挑み、完璧なものができるまで妥協しない。いつでも謙虚。
私は、挟土さんの言葉から、茨木のり子さんの「汲む」という詩の一フレーズを思い出してました。
以下に引用しますね。
大人になってどぎまぎしたっていいんだな
ぎこちない挨拶 醜く赤くなる
失語症 なめらかでないしぐさ
子供の悪態にさえ傷ついてしまう
頼りない生牡蠣のような感受性
それらを鍛える必要は少しもなかったのだな
年老いても咲きたての薔薇 柔らかく
外にむかってひらかれるのこそ難しい
あらゆる仕事
すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている きっと
私もさんざん遠回りして、やっとこの仕事にたどり着きました。
たどり着いたといっても ゴールではなくやっとスタートにたったばかりなんですが。
当然いつだってどぎまぎ。
挟土さんとはレベルが違いますが、でも、すごーく、勇気づけられました。
私はここのところずっと、「土」というものにとても魅かれてます。
「土」というと、土壁や、石灰を原料とする漆喰にもイメージが広がっていくのです。
そこで今日は、以前、新聞の「土に生きる」という特集に載っていた言葉を紹介します。
田川市の左官さんであり、鏝絵職人さんでもある山倉さんという方の言葉です。
…漆喰を塗るときは、温度や天気を勘案しながら乾燥時間を考える。
でも、九州の土は層が若いため、関東や関西に比べてひび割れることも多いのだそう。
「職人の世界では、九州の土は暴れる、という。
九州に活気がある人が多いのは土に原因があると思うよ。
特に筑豊の人は燃える土の上で生活してるから、熱くないはずがない。」
そうなんです。
筑豊の人は、熱いんです。(~o~)
九州の人は、熱いんです。
誇らしくなってきますね。
言葉の力ってすごい。
言葉からパワーをもらうことがある。
その反対に言葉でとてつもなく傷つくこともある。
言葉はちゃんと選んで使おう…と、思いつつ、これがまた
簡単に実践することができないでいます。
そんな自分への反省も込めて…、
茨木のり子さんの詩を、載せたいと思います。
「自分の感受性くらい」茨木のり子
ぱさぱさに乾いていく心を
人のせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
何もかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
…何度口ずさんでも、涙が出てきます。