
「そうか、もう君はいないのか」という本を読んだ。
著者は「落日燃ゆ」などで知られる城山三郎。
著者より7年早く癌で亡くなった奥さんのことを書いた手記。
著者の死後 未完成のままで バラバラだった遺稿やメモを
まとめたものらしい。
著者は 「仕事と伴侶、この二つを愛せれば人生は幸せだ」と語っていたという。
本の帯には
「五十億の中でただ一人『おい』と呼べる妻へ・・・愛借の回想記」
とあり、自分と妻がどんなにぴったり合っていたか、
愛する妻との思い出が濃厚に詰まっているのかと思っていた。
でも読んでみると 出会いの場面などはロマンチックに描かれてはいるが、
思ったよりは 感情を抑えた書き方だと思った。
奥さんの死後しばらくは その死を認めることがうまくできなかった、という著者が、
やっと その死を見つめられるようになって書き始めたという手記。
抑えなければ、辛くなって 書けなかったのかも知れない。
むしろ、あとがきの娘さんの文章が 胸にしみる。
母を看取るまでの 家族の、幸せな濃密な時間。
そして 母の死後 父親がどれほど喪失感に苦しんでいたか。
「連れ合いをなくすということは、これほどのことだったのか。
子や孫は慰めにはなっても代わりにはなれない。
ポッカリ空いたその穴を埋めることは決してできなかった。」
↓本編中にある詩の一つ、タイトルは「愛」。
妻と共に各国へ取材旅行に出かけていたころの作品だそうだ。
深夜
おまえの寝息を聞いていると
宇宙創造以来の歴史が
ふとんを着て
そこに居る気がする
生きていることの
奇怪さ
美しさ
あわれさ
おまえの寝息がやむと
大地に穴があいたように
寒くなる
さて
おまえの乳房をつかんで眠れば
地球ははじまり
地球はおわり
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「かけがえのない存在」というものについて
人の死がもたらすものについて
人生について。
考えさせられる・・・そんな本だったと思う。